サラリーマンの読書日記

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【教育】「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

こちらは2015年に中室牧子さんという教育経済学者の方が書いており、教育経済学が明らかにした知らないともったいない情報を紹介した本です。

日本の教育環境や従来の学習方法や教育指導法などを科学的根拠に基づいたらどうなるのかなどを紹介されており、「日本の教育にエビデンスを」というメッセージを強く説いております。

 

「学力」の経済学

 

 

それでは、とても勉強になったポイントを下記に絞って簡潔にまとめて紹介していきます。

 

ポイント

  1. 科学的根拠なき従来の教育
  2. ”非認知能力”とは?

 

科学的根拠なき従来の教育 

 「教育は一億総評論家」

これは日本の教育政策とアメリカの教育政策を対比した言葉で、いかに日本の教育政策が科学的根拠に基づいていないかと揶揄している。

日本の教育には科学的根拠に基づいた政策を検討する必要性がまだ浸透していないのが現状。

 

「科学的根拠に基づいた教育を」

今の日本は東大に合格した子を持つ親の体験記を聞きたい親が多いが、他人の成功事例を我が子にも当てはめてしまう。例外中の例外は一般化が難しいため、同じことをしてはかえって子どもの可能性を狭める恐れがある。東大に合格した親の平均世帯年収が1,000万円と日本の平均世帯年収よりも高いという報告がある。いかに例外中の例外であるということが分かる。

学力を構成する要因を分析する方法が「インプット・アウトプットアプローチ」があり、アウトプットが学力で、インプットが家庭資源と学校資源の2つがある。

家庭資源には親の年収や学歴、家族構成、教育における支出などがあり、学校資源にはカリキュラム、教員の数と質、授業時間などがある。

 

「目の前ににんじん作戦」

子どもを”ご褒美”で釣ってはいけないのかをデータを基にすると、アウトプットではなく、インプットに褒美を上げることで学力が高まると因果関係があった。

子どもが何をするのかが明確になるためインプットに褒美を上げた方が効果的。しかし、アウトプットに褒美を上げる場合はどうしたら成績が上がるのか、目標に向けて達成する導きなど適切に学習する方法を教えることで効果がある。

 

「子どもは褒めて育てるべきなのか」

褒めて育てる教育についてデータを基にすると、能力を褒めるのではなく、努力を褒めることで学力が高まると分かった。能力や結果について褒めることで、子どもは前回の試験より点数が下がってしまった場合、自分は能力がないのかと自信喪失に繋がる恐れがある。

反対に、努力や過程を褒めると仮に点数が下がったとしても、まだ努力が足りなかったなど次に繋げることができる。

具体的に努力した事やプロセスを褒める事で、さらなる努力を引き出し困難な問題へも取り組むことができる。

『能力を褒めることは、子どものやる気を蝕む』という論文の報告もある。

 

”非認知能力”とは?

本書の中で一番勉強になった内容がこの『非認知能力』でした。 

非認知能力とは、社会性や人間性、創造性、自主性、問題解決力、自制心、意欲性、自己肯定などの「生きる力」のこと。国数英などの学校のテストで点数化されるものを認知能力。

本書では、この非認知能力を養うことで認知能力の向上に繋がると科学的根拠に基づいて説明しており、非認知能力は人から学び、獲得するものと説明している。また、非認知能力を養うことが、学力向上だけでなく、生涯の年収・持ち家率・生活保護受給率・犯罪率など社会的貢献が大きいことが分かっている。

つまり、非認知能力に対しての投資が子どもの人生を豊かにし、そして、数多くの研究が明らかにしている。

 

「非認知能力を科学的根拠に基づいた実験」

・米国における大学中退する学生の高校時の状況

米国ではSATによる共通学力テスト(認知能力)と高校での通知表の成績(非認知能力)が進学時に必要になる。2つを比較した結果、中退することなく卒業できたのは、出身高校のレベルおよびSATの点数を問わず、通知表の成績が良かった学生であったことが分かった。つまり、高校で良い成績を修める過程の中で非認知能力を獲得して、卒業後もポジティブに作用している。

 

・自制心とSATの結果

非認知能力の一つである自制心に着目したマシュマロ実験。約200人の4歳の幼児に対して、1つのマシュマロをいつでも食べてもよいが、少し席を外して戻ってくるまで食べずに待っていたら2つマシュマロを上げるという内容。結果、3分の1の幼児は待ち、3分の2は待たずに食べた。その後、2つのグループを追跡調査を行い、SATの学力結果を比較すると、待たずに食べた子より待った子のほうがSATの結果が良かった。

 

・しつけを受けた子の方が年収が高い

日本の研究報告で、4つのしつけ(嘘をついてはいけない・他人に親切にする・ルールを守る・勉強をする)をしっかり受けた人と全く受けていない人を比較した結果、しつけを受けた人の方が約86万円年収が高いことが分かった。幼少時にしっかりとしつけを受けるのは勤勉性という非認知能力を養う重要なプロセス。

 

「就学前教育が一番重要なタイミング」

高校進学や大学進学時に一番進学費用が掛かるが、データに基づいた報告によると、就学前教育が一番効果的であると説明しており、年齢を重ねることで効果が低くなってくる。つまり、幼少の時に非認知能力を培うことが、子どもの将来をより良くすることに繋がる。

 

「学校という場所」

非認知能力は先天的のものではなく後天的にしつけやトレーニングを通じて育むことができる能力。そして、人から学び、獲得していくものである。このことから、小中高などの学校は、ただ単に認知能力向上のための場所だけではなく、先生や生徒を通じて多くの非認知能力を身に付ける場所でもある。一歩学校の外に出ると、学力以外の能力が求められ重要である。

 

 

 

「学力」の経済学を読み終えて・・・

 

教育従事者や子どもを持つ親にはぜひとも一度読んでほしいなと思えた本です。

様々な実験や統計データ、専門用語が数多くあるので、あまり馴染みがない人にはとっつきにくそうな内容ですが、マンガでわかるシリーズにも出ています。

 

こちらの本は、そうなんだ!と思えるような教育における新たな知識や、確かに!と考えさせる内容が多くありました。僕自身、教育業界にて仕事をさせていただいてるので、職場の人にはお勧めしようと考えてます。

 

一貫として、科学的根拠に基づいた教育の重要性について書いており、エビデンスに基づいていない日本の教育政策について警鐘をならしている内容でした。

また読み終わった後、すごく熱量を持っている人だなぁーと思ったのが素直な感想でした!

 

本書にはこの記事には書いていない、科学的根拠に基づいた少人数教室のことやいい先生とはといった事も述べております。この記事は僕個人が勉強になった点を主に書いておりますので、興味ある人はぜひ一度読んでみてください。

 

「学力」の経済学

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まんがでわかる「学力」の経済学

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