【ビジネス】「いい質問」が人を動かす
「いい質問」が人を動かす
本書は、弁護士である谷原誠さんが書いた著書で、6章構成になっています。
各章ごとにテーマに沿った実際の具体例や、活用テクニックを記載しているので、とても分かりやすく勉強になります。また、人間の心理に基づいた内容となっている部分もありますので、心理学にも興味がある方は読んでて楽しいと思います。
質問が持つ機能や特性を活かし、ビジネス面や生活面など生きるために役立つ方法が記載しており、質問することの重要性の再認識・新たな気づきを得ることができます。そして、「いい質問」が「自分を変え、他者を変え、人生を変える」という力を持っていることを強く説いております。
はじめに
第1章 知りたい情報を楽々獲得する6つのテクニック
第2章 聞くだけで人に好かれる「いい質問」
第3章 その気にさせる「いい質問」
第4章 人を育てる「いい質問」
第5章 議論を制する「いい質問」
第6章 自分を変える「いい質問」
引用・参考文献
それでは、とても勉強になったポイントを下記に絞って簡潔にまとめて紹介していきます。
ポイント
- 質問が持つ機能
- 人に好かれるための6つの質問
- 人をその気にさせる2大原則
- 相手の行動を抵抗なく変えてしまう魔法の言葉
質問が持つ機能
質問には、相手を強制的に特定の方向に考えさせる力を持っており、「思考」させ「答え」させるという2つの強制力を持つ。
・人間は自尊心のかたまり
人間は他人からの命令に従いたくないが、自分が思いついたことには素直に従う。つまり、人を動かすときは命令ではなく、自分で気づいてもらう質問をすることである。
・「いい質問」がもたらす影響力
「いい質問」ができるようになることで、自分の感情をコントロールし、他人を思いやり、人から好かれ、人を動かし、人生をより良くすることができる。古代から現代まで、質問することを絶え間なく繰り返し、答えを求めてきた結果、知識・科学・労働・発明など様々な文明を繁栄させて、より快適な生活を築いてきた。
人に好かれるための6つの質問
・「友からの求めほど耳に心地よい音楽はない」
よき質問者、いい質問をするための前提として、相手から好意を抱かれる必要がある。至極当たり前のことではあるが、他人への配慮が欠けているといい質問をすることはできない。
・人から好かれる6つの法則
①外見の魅力
服装や姿勢、明るい表情や笑顔であり、決して美男美女に限らない。人が他者から得る情報は、ほとんどが視覚情報であり、その次が聴覚情報。最後が言語情報である。
②賞賛
人は自尊心のかたまり。他者から自分のことを褒められたり、認められると好意を抱く。相手のことを認めてから質問をすることが、より有益な情報をヒアリングすることができる。
③類似性の法則
人は自分と共通の話題があると親近感を覚える。自分との共通するものはないか質問を行い、類似するものがあればアピールし、好意を抱いてもらう。
④単純接触効果
人は良く知っているものに好意を抱く。よく聞く・よく見ることができる関係性を築く。
⑤協同
人は誰かと共同することで、その相手に対して好意を抱く。この法則を使う場合は、おお客様と自分VS上司という構図を作る。この構図を作ることで協同の意識ができ、好意を得ることができる。
⑥連合
あることが起きた時、その外的要因とその相手が結びつけられて特定の感情を持ってしまうこと。CMが一番わかりやすい例で、俳優や女優を起用し、商品に好印象を持ってもらう。相手が幸せだったことや楽しかったこと、興味があること、ワクワクしたことなどポジティブなことを聞く質問をすることで相手から好意を抱いてもらう。
・好意の返報性
人から好かれる最強の方法が好意の返報性で、一番学べる相手は「犬」である。
人は自分に対して、好意も抱いている人に好意を抱く。これを好意の返報性と言う。自分のことを無碍に扱わず、大事に特別にしてもらえている感じれば、喜んで決断を変更する。
つまり、質問をする際は心の底から相手に対して興味関心を抱き、大事に接し、自尊心を傷つけることなくできれば、相手は好意を抱いてくれ、質問に対して快く答えてくれる。ただ、重要なことは質問する態度。態度や表情、姿勢などの視覚情報が一番相手に影響を与えるため、質問の内容に一致した声・表情・態度で質問をしなければならない。
人をその気にさせる2大原則
・ 人はどういう時に行動をするのか?
①自尊心を満たすため:お金を得たい、快適な生活をしたい、名誉を得たい
②自尊心を傷つけないため:他人の評価を下げたくない、自己評価を下げたくない
この2大原則を活用して、質問を重ねていき相手に思考してもらい答えてもらう。
・まずは「感情」を動かし「理性」に訴えかける
2大原則をより活かす方法として、ニーズを聞き出し、自尊心を高めて感情を動かし、自尊心を傷つけないよう理性に訴えかけて行動を正当化してもらう。
そして、さらに強力に動かすために質問のシナリオを作ることが重要。質問は相手を強制的に特定の方向へ思考させる力を持っているので、こちらの望む道筋で思考してもらう質問のシナリオを作ると会話と他者をコントロールできる。
人は、他人から押し付けられる事を嫌うが、自分で決めた事は快く行動に移すため、命令ではなく、相手が動きたくなる質問をする。
他にも、「一貫性の法則」「希少価値の法則」「返報性の法則」「社会的証明の法則」など人間の心理に基づいた質問方法もある。
相手の行動を抵抗なく変えてしまう魔法の言葉
人は自尊心のかたまり。いきなり自分の行動を変えろと言われるとこれまでの自分の否定されている感じ、反発し従わない。
つまり、素直に行動を変えてもらうためには、自尊心を傷つけないように相手の意見を肯定・承認し、別の理由で行動を変えるよう働きかける。そして、行動が変わった後に賞賛・評価・感謝を伝える。その後の行動を褒める事で半永久的に行動を変える事ができる。
要は、過去を肯定し、別視点から質問し行動を喚起し、行動した事を賞賛する。
「いい質問」が人を動かすを読み終えて・・・
本書のタイトルを見るだけでは、「いい質問」をすることで他人をコントロールできるテクニックが紹介されているのかと思いましたが、実は「いい質問」をする、できるようになることで自分を動かす、自分をコントロールする、自分を変えるという内容だったという印象を受けました。
もちろん他人を変えるためにも応用することはできますが、まずは自分を変えることが重要だと感じました。
また、仕事は人と人との繋がりで成り立っている以上、人とコミュニケーションを避けては通れないですが、円滑に仕事をするために本書はとても勉強になりました。質問が持つ機能や重要性を改めて理解する事ができ、すぐにでも実践したいと思える内容でした。
本書の中で、大日本帝国軍人の山本五十六の言葉が紹介されており、すごくいいなと感じました。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かなじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」